2006.4.17 社長のブログ4:「独目八目」

最近の出来事:しばらく多忙にかこつけて、ご無沙汰いたしました。私の滞独は32年にもなります。
ドイツの会社も片付きだしまして、少し日本の市場にも目を向ける時間が多くなりました。本来の得意なマーケテイングを日本市場で、駆使するということは、大変楽しいことであります。社員からは「ついていくのが大変!」、悪く言えば『ひっちゃかめっちゃか!』との事ですが、私には、一つ一つ成果を挙げていく責任があるわけですし、約20年前に、日本市場へ輸入ピアノで、ドイツから進出しようとしたときには、昔の業界の知己は、全員大反対でした。ともかく、弊社が、20年近く存続しえただけでも、私自身にとっては楽しい経験です。同時に、販売店とご購入いただいた皆様のおかげです。
一方、松下の電子楽器のドイツ総代理店という事業は、ドイツでは、国民全員が待ち焦がれる、65歳の定年の日(11月16日)に、偶然にも、清算の登記をいたしました。これまた、会社創立から最初の15年近くは、ヤマハを追い上げ、利益が出てしょうがない状況も作り出しましたし、勉強にもなりました。ここで、経営という私の使命の一つの山が、終わったことになります。
日本の事業の、ひとつの区切りとして、今回の「東京芸術センター」への納入の記念コンサートを企画いたしましたが、準備不足で何も出来ず、会場にお越しいただいた方、出演された方、関係者の方、大変申し訳ありませんでした。
さて今回は、天空劇場(ホール、400席)について若干、補足説明をしておきます。
=演奏会の前に挨拶で述べさせていただいた2点です。
1.この劇場(ホール)は残響の長さにとらわれずに作製したので、演奏者に厳しいホールです。演奏者は、ホールに合わせた演奏を考えなければなりません。
3月には、ベヒシュタインのピアノコンクールの最終演奏会が、エッセンの新しいホールでありました。ここはまさにその正反対で、鳴りすぎるホールで、全演奏者のピアノコンチェルトのピアノ音がよく聞こえてしまい、結果としてつまらなくなってしまいました。教会のコーラスがうまく=きれいに、聞こえるのと同じ効果です。
天空劇場での、15日の、斉藤アンジュさんは、後半見事にそういうホールにあわせた細かい変化を考えた演奏に変えられました。たとえば、ヴァイオリンの弦から弓を離すタイミングを遅らせる、とか、ヴィヴラートの長さを変える、などなどです。
まさにこの建物の建築家、村井社長のいわれる、「ホールが演奏家を育てる」、という成果が、もう現れたことになります。ピアノの場合も残響を考えて、鍵盤から指を離すタイミングを遅らせるとか、ペダルの使用法を変えるとか、自分の求めたい音をどう実現するかの工夫をしなければなりません。そのためにはテクニックもさることながら、自分の求める音が分かってなければならないこと、それが聴衆にどう響いているか、も考えなくてはなりません。ホールや、観客が演奏家を育てるという意味の立証です。
2.またまた、村井社長が、贅沢にも、建物の一階の一番よい場所に、楽器を収納する場所、展示できる場所を考えてくださいました。天井は5mもあるラウンジ空間で、そこには、ザウター182cmと、シュタイングレーバーの168cm、のグランドを収めさせていただきました。
人間の知恵の発達の一番最初は、「違いを認識する」ことから始まります。1歳の赤ちゃんを想像してください。何か一点(特に人の顔など)をじっと見つめている光景によく出くわすでしょう。耳で何かを識別することも同じです。そのときに、記憶の細胞が形成されて、同時に、少しづつ、違いを認識するのです。
ピアニストは、今からでもそれを意識的にトレーニングしなければ、自分の欲する音がわからないままになるし、それに呼応するタッチの訓練にもなりません。公共ホールや、国立の一流音楽大学の備品が、ヤマハとスタインウェイでは、学生のそういう成長を閉ざしていることにもなります。
そのうち、ここの、4台を弾き比べて見ることも、可能になるでしょう。お問い合わせは、メールでどうぞ。
今日も、広島の、美術館にベヒシュタインが納入されました。まずは、“聴きなれない音”という認識でも結構ですから、新しい響きを聴く、聞く、機会を持ってください。まずは、今後のTGCの活動に注目ください。
又、まもなく帰独です。次回帰朝する頃には、もう少し長く日本滞在が出来るよう、ドイツ会社の清算を終わらせるべく努力いたしたいと存じます。

