2008.05.27 社長のブログ8:ソロのピアニストは、ピアノ伴奏者より上?

日本人は誰もそう思います。それは、一人で、舞台の上で、リストを弾きまくる方が格好がいいし、実力も発揮できます。誰でも、ソロのピアニストを目指します。
ところが、ドイツでは、そうでもないのです。
いや、「伴奏ピアニスト」の代わりに、「室内楽のピアニスト」というと、もう少し分かりやすくなりますが、この質問の逆で、伴奏者、又は、室内楽でピアノを弾かれる方の方が、「上」だとも言えるのです。“その通り!”とおっしゃる方は、ドイツへ留学されたか、日本で、ドイツ人などのレッスンを受けた慧眼の持ち主です。では、どうして、伴奏者の方が上なのでしょう?「上」とは誇張をしていったので、全ての場合において「上」、という意味ではありません。それを解き明かそうということが今日のテーマです。
理由その1.日本の音大を卒業し、ドイツの音大大学院に進む場合、最近ではその試験は大変難しくなってきました。いくつも理由はありますが、その大学院入学試験は、先ず、ピアノソロの試験に合格した人だけが、次に進み、伴奏・室内楽の試験を受けられます。つまり、ピアノソロの次に、伴奏・室内楽のコースがあることになります。因みに、ドイツでは音楽大学、大学院卒業資格を「KA」=「国家芸術家」称号、といいます。
理由の2つ目として、来年、第2回ベヒシュタインピアノコンクール日本予選がありますが、その試験の過程は、2次試験(ソロ)のあとに、アンサンブルの3次試験があります。ここで、たいていの日本人は落ちてしまいます。というのも、プロの歌手又は、弦の2-3人が用意されていて、選んだ曲の演奏の仕方について、話し合いながら、曲を仕上げていくとう過程があるからです。しかも、この初めての人と、音楽観なども話し合って(英語可)仕上げる過程も、審査員は見ています。つまり、ピアノソロより難しいレベルです。
これを通ると、最終が、ピアノコンチェルトの演奏、となります。因みに、入賞者には、約800万円くらいの賞金と世界での演奏会が、5-20回程度用意されています。ですから本当に実力のある、活躍中の方が参加します。審査委員長のBroch教授が世界の予選を全部審査します。日本予選を通るだけでも意義のあることですから是非応募下さい。日本予選は2009年の9月「神戸芸術センター」で行われ、本選はドイツのエッセンで、2010年3月です。
理由の3つ目。ドイツ語で、「ピアノを演奏する」は“Spielen”=Play=遊ぶ、 という言葉を使います。もう一つ、ドイツ語に“Musizieren ”という言葉もあります。
通常、音楽をする、とか、演奏する、とか訳されていますが、「ドイツ語中辞典」(鉄野先生編)では、「(一緒に)音楽をする」と訳されています。この「一緒に」音楽をすることも、重要で、楽しいこと=音楽を通じて人とコミュニケーションをすること、でもあります。
本来、ピアノソロか、伴奏・アンサンブルのピアニストか、ということは、個人プレイと、チームプレイに置き換えられますから、上下の問題ではありません。音楽をする形として、一緒に弾くことも、重要なことなのです、ということを、西洋音楽の本場での音楽のあり方として、もう少し理解してほしいと思いました。どうぞ、皆さん“Musizieren”して下さい。
スペースがあるので、余談です。5月23日、敬愛する深沢亮子さんの「ピアノリサイタル」がありました。れっきとした「ピアノリサイタル」ですが、プログラムのうちにピアノソロは真ん中に3曲で、後は全てトリオでした。聴衆としては、大変楽しめる、暖かい音楽会で、素敵な時間を共有できた、という感想です。さすがに分かっていらっしゃる方は、音楽の提示の仕方が違う、と思った次第です。

