« 2009年10月 | メイン | 2010年03月 »

2009年12月25日

2009.12.25社長のブログ16:<独目八目> ブレンデルの言葉――読売新聞09.11.24夕刊より

最近は、経営も厳しいし、滞独35年の視点“独眼流”ブログをほかのテーマで書いてみたり、
余分な仕事をしてしまい、この本業のブログも滞りがちで申し訳ありません。
もう12月、本年1年間皆様のご支援を心よりお礼申し上げます。
幸い、本年9月の決算は、為替差益のお蔭もあり、何とか黒字を出すことも出来、配当も3.5%と増配することといたしました。来年は更に積極的に需要創造活動に精を出すつもりでございます。
 
さて、78歳のブレンデルは第一線から、引退するという。その引退取材記事が、読売新聞に掲載された。この記者の方には是非お会いしたいと思うが、先ずは、ほんの一部を抜粋させていただこう。
「大きなホールで演奏しなければならなくなった結果、より大きな音を出せる代わり、ゴツゴツした金属的な響きのピアノが当たり前になった。大音響でピアノを打ち鳴らせば、音楽が抱擁する繊細な感情が吹き飛んでしまう。しかし現代の聴衆はそうした音を求める。一昔前の巨匠なら『寄り付きもしなかった楽器』(カッコは筆者)を使わざるを得ない若手の先行きを案じる。」
                                     
『一昔前の巨匠なら見向きもしないピアノ』とは、どこのピアノだろう?
ドイツ製?日本製?よくもここまで言い切ったものと、私は正鵠を射る指摘に驚愕すると共に現代の悲劇を感じた。こういう巨匠にはまだまだ活躍してほしいものだが、後進に期待せざるをえないのだろうか。誰が後進だろうか?

最近の、12月13日の「日経」にも、内田光子さんの記事があった。
その内田さんの言葉は、ブレンデルと共通するものがある。しばらく前の話だが、中国新聞に、2回に亘って、内田光子さんの記事が紹介されていた。
曰く、大原美術館のピアノ(1920年代のベヒシュタイン)に接して、「ピアノの音が消え行くときの美しさ、それを表現できる楽器に久しぶりに出会えた」と述べておられる。
2010年の弊社、カレンダーの表紙(希望者は、一部税込み800円。送料別)に載っている。

こういう、「本当」を伝える私のピアノ談義や薀蓄を傾けるために、常々、ピアノの本を読むのも好きである。最近の本としては、「レオ・シロタ」毎日新聞社刊、山本尚広著 と、田村宏先生の「回想録」ショパン社刊を拝読した。
レオ・シロタ氏は、ブゾーニーの弟子で、ウィーンで活躍した後、日本に相当期間滞在し、日本のピアノ音楽の揺籃期を支えた。確か毎日音楽コンクールの第1回の審査員であったと思う。そして、その時のピアノは、ベヒシュタインであった。
去る12月19日には、塙 保己一(江戸時代)の表彰式(埼玉県本庄市)で、梯 剛之さんがベヒシュタインを弾いた。ピアノの違いをまざまざと見せつける(聴かせる)すばらしい演奏であった。ピアノはどこのピアノでも同じ音だ、とは思わない聴衆と教育者が育つことを切に願う。
かっての巨匠が、名演奏といわれる評判の演奏会で、どのピアノを弾いていたか、という論文なり
研究があってしかるべきである。というのは、私が「ベヒシュタイン物語」で述べている如く、各ピアノメーカーの創立者や、その後の後継者は、どういうピアノを作りたいか、という明確な意図があって、創業し、後継しているのであるから。そこには、製作者とピアニストの関係が明確にある。
必然的にピアノの名演奏といっても、出てくる音、表現の仕方=演奏テクニックなど大きく違う。

例えば、ドビュッシーの研究家、演奏家といわれる方は、ドビュッシーがどこのピアノを使って、そのピアノに対する論評の言葉を知っているだろうか?一昨年、ポーランドを訪問した際、ドビュッシーの研究をされている方から、私がベヒシュタインの総代理店をしている知って、“ドビュッシーがベヒシュタインを使用して作曲していることは知っています。でもそれは、2本ペダルのピアノか、3本ペダル(トーンハルテペダル)かベヒシュタイン社に聞いて下さい”といわれたことがある。
回答は、3本ペダルであった。
ケンプもベートーヴェンのワルトシュタインを弾く際にベヒシュタインについて述べている。これを松浦先生は、演奏会でベヒシュタインを使用された際に言われたことがあった。
園田高弘先生から、私が直接お伺いした言葉もどこかで紹介したこともある。
つまり、先生は、ヤマハのCFⅢの試作品と、ベヒシュタインのBと、スタインウェイのBをもっておられて、その3台から自分の演奏を仕上げられていた。

メーカーと演奏テクニックと、作曲家の関係などは、世の、学者先生に研究していただきたいテーマである。東京芸大の博士論文のタイトルをインターネットで見てみたが(最近のもの)勿論そんな研究などない!日本人のピアニスト、や研究家の見る眼(耳?)をもう少し広くしていただけないだろうか?

今回はここまで。

文責 戸塚亮一


【過去の記事】
2009.08.25 社長のブログ15:<独目八目> ヨーロッパ留学希望者の方へ―― 2>
2009.08.05 社長のブログ14:<独目八目> ヨーロッパ留学希望者の方へ―― 1>
2009.04.17 社長のブログ13:<日本のピアノ・ヨーロッパのピアノ>
2009.03.01 社長のブログ12:「紙(幣)上の楼閣・2008年の崩壊」 独眼流孔明
2009.02.12 社長のブログ11:神戸芸術センターピアノコンクール 第2回
2008.10.24 社長のブログ10:最近の結婚式の挨拶から、次々に展開する話し
2008.09.29 社長のブログ9:また、ホールについて/日経の記事より(その1)
2008.05.27 社長のブログ8:ソロのピアニストは、ピアノ伴奏者より上?
2008.04.29 社長のブログ7:ピアノの違いを分かってほしい
2007.05.12 社長のブログ6:2つの演奏会評
2007.03.01 社長のブログ5:建築家、村井敬氏の見識
2006.04.17 社長のブログ4:「独目八目」
2005.12.01 社長のブログ3:社長からのメッセージ
2005.10.01 社長のブログ2:低価格の販売は
2005.06.06 社長のブログ1:戸塚からのメッセージ その1