差異

2009年10月28日(水)

ピアニスト内藤晃さん宅のベヒシュタインK型は、朴訥なドイツ語のような響きで鳴るピアノだ。

会話している言葉の響きをBGMにその渦の中に身を置くと、使われている原語の違いによって空間を埋める気の色合いが違うと感じられた方は多いのではないだろうか。僕は、空港でしばしば言葉の渦が造る響きの色合いの違いを体験するが、同じような意味で、楽器の響き具合の中にも、言葉の渦の響きから受けるような違いを感じる。

今回はそのドイツ語のように響くピアノをヴェルクマイスターで調律することになった。

ベルクマイスターは、不等分律の1つで、完全に調和する5度と4度がいくつかある。平均律の場合、5度や3度を調和させるという概念ではなく、オクターブを12等分に割っているので、音程比で1:1と1:2、すなわちユニゾンとオクターブ以外の音程間には全てにうなりが生じる。しかしながら、不等分律では、調整によって、例えばトニカの同じ展開形でもうなりの感じが異なるので、調によって、和音そのものが叙情的な感じがしたり、不安な感じがしたりする。

内藤さんが行いたい事というのは、調整の雰囲気を掴む、例えば、へ長調とニ長調との雰囲気の違いと、曲そのものの持つイメージが作曲者の意図としてどのように捉えられているのかという事から、きっと彼の事なので凡人の僕には思いもよらぬもくろみまであるのであろう。。。
などと思いながらチェンバロやフォルテピアノとは違う、鋼鉄の弦が張られるモダンピアノでのベルクマイスターの調和音程と格闘した。

ベヒシュタインのモデルKの場合、88鍵全てがアグラフという部品が使ってあり、共鳴弦が無い状態に設計されているので、ピアノから発せられる余韻に響きの飾りが無く、調和感が合唱で体感する”ハモリ”ようになった。ペダルで単音が復音としてぶつかり合うと,まさにコラールのような感じになるのだ。

A.Naito auf Bechstein K

調律後、弾き手の内藤さんも、聴き手の自分も同じ事を感じたが、ただの単音がつぼみのように膨らみ、いつもとは違う魅力的な世界を織り上げた。

たかが調律されど調律なのか。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

*