【連載】ベヒシュタイン物語 第3楽章 ベヒシュタインはこうして作られる

25,《モデルの選択をどうするか》

 

日本製をはじめとする量産メーカーでは、小型のグランドピアノと大型のグランドピアノでは、その使用する材料は明らかに異なります。つまり大型のものほど良い材料を使用して、価格も小型のものに比べて高くなっています。その理由としては最初は小型のもの(安いもの)を購入してもらい、いずれ大きなものに買い替えてほしいからです。後でも触れますようにピアノは、本来摩耗する部分といつまでも使える部分があるにも拘らず、摩耗する部分の交換は必要になる時期に、そこだけ取り換えるよりも、全体の品質が低く価格も安いために、買い替えてしまったほうが交換にかかる料金(ほとんどが作業料金です)よりも安くなってしまうからです。

現在ベヒシュタインでは、アップライトピアノ、グランドピアノそれぞれ六種類のモデルを製作しております。

鍵盤は、すべて八八鍵(七と1/4オクターヴ)アクリル仕様で、希望に応じて象牙白鍵、黒檀黒鍵とすることもできます。ただしワシントン条約により、条約施行以降以後の製作となる楽器については、象牙の輸出入は禁止されていますので、どうしても希望する人は正規販売代理店に相談する必要があります。

ベヒシュタイン・ピアノは、クラヴィア・バウ・マイスターや、熟練工による手作りですから、

  • たとえ、小さいモデルに安い材料を使用したとしても、価格はほとんど反映していません。ですからKモデルでもフルコンサートでも最高の材料が使用されています。
  • 差をつける程、たくさんは作っていないのです。

そして、最も重要なことは、

  • 全体での響きであり、ピアノの置かれているその部屋の材質や音響特性に合った、しかも最高のピアノを選ぶことです。

とかく日本人は置き場所に構わず大きいものを求めがちですが、小さいベヒシュタインは小さい部屋に置かれることを考えて設計しているのです。日本製でこういうきちんとした考えを持っているメーカーはほとんどありません。

つまり家庭の通常の広さの応接間に、フルコンサートグランドや大型のピアノを置くべきではなく、置いたところできれいに響くように設計・製作されていないのです。ただし例外として、ピアニストがホールで弾くための練習用として、自宅にコンサートグランドを入れることには充分に違った意味があります。モデル毎に鍵盤フタによって見えない部分も含め鍵盤の長さが違いますから、微妙に異なったタッチと音の出てくる位置を感じて、演奏会に備えなければならないからです。

 

つづく

 

次回は26《価格と資産価値から見ると……》

をお送りします。

 

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【連載】ベヒシュタイン物語 目次

 

向井

 

注: この内容は1993年発行のベヒシュタイン物語(ユーロピアノ代表取締役 戸塚亮一著)より抜粋しておりま す。なお、この書籍の記載内容は約20年前当時の情報を元に執筆しておりますので、現在の状況・製品仕様と異なる点も多々あります。予めご理解頂けますよ うお願い申し上げます。